楽園追憶

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自分的士郎正宗の魅力

攻殻機動隊 (1)    KCデラックス

攻殻機動隊 (1) KCデラックス

ブラックマジック―士郎正宗初期作品集

ブラックマジック―士郎正宗初期作品集

 私としては今まで士郎正宗作品(「アップルシード」「ブラックマジック」「攻殻機動隊」「ORION」など)を読んでいるときに感じた魅力はいくつかの点に集約されます。

 まずギミックの映像化を含めた世界の再構築の妙。
 士郎正宗作品に出てくるギミックや設定というのは、基本的にはそれほど目新しいものはないと思ってます。凄いと思うのはギミックをキッチリ掘り下げて、自分の世界に取り込んでいること。
 ギミックだけ持ってきて自分の世界に無理やり乗っけているのではなく、ギミックを取り込んだ上で世界を再構築し、世界を練り直すという作業をキッチリやっている。
 これは実はへたなSF小説なども避けて通る道で、キッチリやっている作品というのはそれほど多くはない。しかも士郎正宗はそれを映像の上でやっている。逆に言えば映像化という”嘘のつけない”媒体を用いているからこそ、しっかりした世界の再構築を行う必要があったともいえると思う。

 映像化についてのセンスと幅広い知識も大きい。「攻殻機動隊」は特にそれが顕著で、サイバーパンクの代表的作家であったウィリアム・ギブソンが、自著に登場させたコンピューターや最新技術について、実はそれほど造詣を持っていなかったこととは対照的。
 「サイボーグ(義体)」「AI」などの解釈や掘り下げについても、有名サイバーパンク小説の多くが具体的な掘り下げ行わず、実際的な描写にまで至らなかったことを考えるとやはり凄い。
 でも”実際的ではない”というのは逆に良かったと思う。多くのサイバーパンク小説が発表された時期、まだコンピューター技術も今ほどではなくどっちにしろあれ以上の掘り下げは無理、やったとしても空論にならざるえなかっただろうし。結局絵が伴わなければどれだけ描写しようと実際的にしようとするのは無理があった。

 またストーリーについても、普通の作家が一話として完結させるような話しを全体のストーリーのなかにちゃんと取り込んでいる構成の旨さ。
 これは氏のどの作品にも言えると思いますが、昔とくに印象に残ったのは初期作品であるブラックマジックのM66暴走の話し。
 当時、同時期に同じような話しを書いている漫画(園田健一とか)や映画はありましたが、時勢だったのかどの話しも一発ねた扱いというか……ネタだけで完結してしまっていることが多かったように思う。

 そんな中にあって、同じようなストーリーながら話しをネタとして完結させるだけでなく、長編の中の流れの一つとして扱いパーツとして旨く取り込んでいる。こういう長編構成の妙というかテーマ消化の旨さ。
 上記の魅力について、それぞれを個別に持っていたSF作家はいたけど、それを全て持っていた作家というのは、少なくとも自分は同時期には士郎正宗氏しか知らなかったし、氏が初めてだったと思う。
(後に氏の影響もあったのか、同様の魅力を持った作家は何人か現れている)

 なんだかべた褒めになってしまいましたが、今回は好きなところをまとめるという趣旨だったので。まあ当然あまり好きじゃないところもありますが、それは今回はなしで。